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「場所」論―ウェブのリアリズム、地域のロマンチシズム (叢書コムニス08)

によって 丸田 一


4.1 5つ星のうち(6人の読者)

「場所」論―ウェブのリアリズム、地域のロマンチシズム (叢書コムニス08)電子ブックのダウンロード - 内容紹介 1980年代には、どこに出かけても同じ景色、同じ味、同じ匂いがする奇妙な街づくりが日本中で進行していた。その様子は「没場所性」や「ファスト風土」などさまざまな論者によって繰り返し説明されてきたが、どれも地域の場所喪失を指摘していた。90年代に入ると、インターネットが急速に普及したが、これまで慣れ親しんできた電話やテレビなどのメディアと違って、単なる伝送形式ではなく、空間形式を備えるようになった。こうして「ウェブ空間」あるいは「ネット空間」と呼ばれる活動空間が現実世界に登場した。一方で場所が失われ、他方で新しい場所が生まれる。この場所を巡る複雑な事態を明らかにするのが本書の狙いである。 著者からのコメント 場所とは、人間に係わられて意味を帯びた空間である。いわば活動空間であり、さらにいえば人間に「生きられた空間」である。地域をはじめ従来の活動空間を「現実空間」と呼ぶなら、今やウェブ空間は、現実空間に匹敵する重要な活動空間である。私たちは二つの異質な活動空間を手にしたが、むしろキーボードやスクリーンを境に、両空間は重なり合い、私たちの知覚が交錯し、特に「生きられた空間」としてみると両空間は複雑な関係を帯びている。 ただし、このような存在論的な議論は、近頃ほとんど見られなくなった。1970年代までもて囃されていた存在論的場所論も、今や本家の地理学からも忘れ去られたかのようである。しかし最近、社会活動の重心がウェブ空間へ移行するなかで、自己や個人の現れ方が変質してきたという指摘が多くなり、ウェブ空間を実存の根拠として、つまり「生きられた空間(場所)」として見ていく視点が生まれつつある。そこで改めて存在論の観点から、場所を巡る状況を明らかにしていくことにした。 本書のポイントは、二点である。一つは、ウェブ空間の空間性、場所性を明らかにすることである。ウェブ空間は、少し大げさのようだが驚くべき空間特性を示している。ざっと挙げただけでも、「見えない存在」を許さないインターフェース性、繊細なコミュニケーションを実現する同期性や同位性、第四の権力としてのアーキテクチャ、ベキ法則を示すデ--ターベースなど現実空間にはみられない空間性を示している。 そして、その特異な空間性は、特に人間に係わられてウェブ空間が「場所」として現れるとき際立ってくる。個人と世界が反転したグラデーションを示し、自己は携帯電話の履歴情報のような遍在したデジタルデータとして現れる。このように、ウェブ空間は、私たちの実存を支える「生きられた空間」である。 もう一つのポイントは、現実空間(地域)の行方を探ることにある。ウェブ空間の登場で、私たちの足下では活動空間の全体マップが書き換わった。その結果、地域は、諸存在を並置する「共通の空間」を失い、「混在郷(ヘテロトピア)」に化している。それは、非在郷(ユートピア)を目指してきたはずの私たちが選好した現実である。まずは、このような現実空間の矛盾形容語法(オクシモロン)的状況を明らかにし、その上で、現実空間の行方を探っていく。 現在、両空間をみると、現実空間のウェブ空間化が進行しており、ソジェをはじめ多くの関心が両空間の「重なり」に集中している。しかし、本書では、ウェブ空間化によっても浸食されない現実空間の「残域」に着目する。残域はどこに着地するのか。その答えは「郷土」にある。(丸田 一) 内容(「BOOK」データベースより) 地域の衰退が指摘される一方、インターネットの急速な普及に伴い、ウェブ空間という新しい活動空間が突如出現した。失われゆく場所があり、他方で新しい場所が生まれる。静かに進行するこの劇的な事態を明らかにする。 著者について 丸田一(まるた・はじめ)評論家。1960年生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。UFJ総合研究所主席研究員、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)教授、同副所長などを経て現職。著書に、『ウェブが創る新しい郷土:地域情報化のすすめ』(講談社現代新書)、『地域情報化の最前線:自前主義のすすめ』(岩波書店)、『地域情報化認識と設計』(共編著、NTT出版)などがある。 著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より) 丸田/一 評論家。一九六〇年生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。UFJ総合研究所主席研究員、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)教授、同副所長などを経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

「場所」論―ウェブのリアリズム、地域のロマンチシズム (叢書コムニス08)の詳細

本のタイトル : 「場所」論―ウェブのリアリズム、地域のロマンチシズム (叢書コムニス08)
作者 : 丸田 一
ISBN-10 : 4757102496
発売日 : 2008/12/22
カテゴリ : 本
ファイルサイズ : 19.44 (現在のサーバー速度は26.59 Mbpsです
以下は、「場所」論―ウェブのリアリズム、地域のロマンチシズム (叢書コムニス08)に関する最も有用なレビューの一部です。 この本を購入する/読むことを決定する前にこれを検討することができます。
インターネットという脱地域的な技術革新を地域の発展(衰退の食い止め)の文脈に還元しようとする試みは、これから益々注目されてしかるべきなのではないか。インターネットの出現により地方に居てもコミュニティやコミュニケーションに参画できる、情報の取捨選択に参加できることから、少なくとも人間の都市への移動を食い止める手段にはなり得るのかと。一方で、地方、地域という場所の活性化を行うためには、政治的な規模での変革がやはり必要な気がする。地方に財源を譲渡するだけでは、地域毎の自主的な活性化はままならないのではないのか。遷都や道州制ではないけど、このまま地方を放置すれば、都市空間もべき法則の通り、一局集中が進む一方になる。ウェブの技術的方向性と地方、地域の活性化の話を統合して行くには、多くの困難があるとは思うが、ウェブによる「場所」を意識することが、この、壮大にして、ロマンチックな変化を生み出す唯一の方法のように思える。インターネットは自律的に発展してきた技術だが、これを地域活性化に生かすには政治の力の関与が絶対的に必要と思われる。世の中全ての局面で起こっているべき法則の現象(これは、何かが過剰な状態になると必ず起こる現象ではないだろうか。世の中、全てが過剰なのだ。過剰になると平均は意味がなく、格差が生じる。)を考えると、ゆっくりは出来ない。あとは、金銭的な価値観に取って替わる価値観の登場が必要だろう。地域の「場所」を意識しようと思えば、金銭ではない何か(新しい価値観の枠組み)がドライブしないと、地域というテーマは加速し難いと思う。非常に難易度の高い命題だとは思うが、地域のアイデンティティの復活と、地方の活性化のためには、ウェブとの接点は重要な意味を持つということが、著者からの熱いメッセージだと思う。

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